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ISO9001とは?最新の要求事項から取得の流れまで完全解説!

ISO9001は、世界で認められた品質マネジメントの国際規格です。ISO9001の取得にはコスト面でのデメリットがある一方で、品質向上などのメリットがあります。自社の品質管理体制に課題を感じている方のなかには、品質向上の一環としてISO9001の取得を目指している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ISO9001の概要やメリット・デメリット、要求事項から取得までの流れについて解説します。ISO9001を効率的に取得できる方法もわかるため、取得を検討される方はぜひ最後までお読みください。
目次
1. ISO9001とは
ISO9001とは、よりよい製品・サービスを供給するための国際的な規格です。「顧客が満足できる製品・サービス」の安定的な提供に向けて、製造体制の整備や適切なルールの遵守などが求められています。
ここでは、ISO9001を理解するうえで押さえておきたい、品質マネジメント規格やQMSについて解説します。
ISOとは「国際標準化機構」
ISOとは、1947年に設立された非政府機関である「International Organization for
Standardization(国際標準化機構)」の略称です。
ISOは、グローバルな取引が円滑に進むようにさまざまなものを対象とした世界基準を提供しています。工業製品はもちろん、食品や医療、安全や技術などあらゆる分野で「ISO規格」を定め、国ごとで異なる品質基準の違いで混乱が生じないように統制しています。
ISO9001とは「品質マネジメント規格」
ISO9001とは、ISOが定める「品質マネジメント規格」です。お客さまの要望や期待に合った製品・サービスを作り出すために、業務の標準化や実施状況の点検・改善など会社が構築すべき提供プロセスをまとめたガイドラインともいえます。また、ISO9001では「プロセスを改良し続ける仕組みづくり」も重要視しています。どれだけ素晴らしい仕組みでもミスは必ず発生するからです。そのため、システムを導入し目視確認によるケアレスミスを防ぐなど、同じミスが起こらないような体制づくりも重要です。
品質管理体制(QMS)とは
品質管理体制とは、製品・サービスのクオリティを維持・改善する仕組みです。「Quality Management
System」の頭文字をとって「QMS」と呼ばれます。
お客さまが満足するような製品を作り続けるためには、適切なルールを遵守する仕組みと、よりよいクオリティを保ち続ける体制が必要です。ISO9001の取得によって、自社の品質管理体制の信頼性をアピールできます。
2. ISO9001を取得するメリット
ISO9001の取得は、社外の評価や社内の体制を向上させるうえで、以下のようにさまざまなメリットがあります。
- 自社の信頼度が増し取引先を増やせる
- 会社内の品質管理体制を構築できる
- 生産効率UPと品質向上が実現できる
ここでは、取得するメリットを具体的に解説します。

自社の信頼度が増し取引先増加に貢献できる
ISO9001を取得することで周囲からの信頼が厚くなり、ビジネスのチャンスが拡大する点がメリットです。
認証取得は自社が国際基準をクリアしている証明となり、クオリティの高い製品・サービスを作り出す会社だと認められるためです。また、官公庁の仕事を請け負う条件となっていたり、取引を行う判断基準とする会社があります。
ISO9001取得により他社との優位性が高まる可能性があるため、取引先の増加に貢献できます。
会社内の品質管理体制を構築できる
ISO9001の取得は、会社内で品質管理体制を構築するきっかけになります。
取得に向けては、社内の現状を踏まえた課題を明確にしたうえで、適切な品質管理体制を構築するための計画や資源の調達などを決定する必要があります。また、計画に基づいて実際の運用結果について評価、改善を繰り返すことで、理想の品質管理体制が構築できるでしょう。自社製品のクオリティを高いレベルで保ちたい場合、ISO9001取得を目指すことで、自社の品質管理体制を整備できます。
生産効率UPと品質向上が実現できる
ISO9001取得によって、自社の生産効率と品質が向上する点も大きなメリットです。
ISO9001においては、作業手順やプロセスを明らかにしなければなりません。曖昧な部分を減らしていくことで業務が標準化され、結果として会社全体の生産効率の向上が実現できます。また、常によりよい体制を目指すことで、業務改善だけではなく従業員の意識改革にもつながるため、品質向上も期待できます。
3. ISO9001を取得するデメリット
ISO9001取得は、会社としてさまざまなメリットがある一方で、以下のようにいくつかのデメリットも存在します。
- 従業員の業務負荷が増える
- 取得や維持のためにコストが発生する
デメリットを理解し、必要な対策をしっかり検討すれば、ISO9001の取得で失敗する可能性もなくなるでしょう。ここからは、2つのデメリットを解説します。

従業員の業務負荷が増える
ISO9001の取得によって、従業員の業務負荷が増える点はデメリットの一つです。取得に向けては、事前準備や体制構築の検討などに多くの時間と労力がかかります。また、従来のやり方を変更するのは、従業員にとって負荷がかかる取り組みです。
さらに、認証を取得して終わりではなく、体制維持や改良を続けていくために相当の負荷がかかります。負荷増加の対策として、効率的に体制構築ができる品質管理システムの導入を検討しましょう。
取得や維持のためにコストが発生する
ISO9001の取得や維持には、さまざまなコストが発生します。社内で一定水準以上の体制を作り上げるには、基盤となる取り組みの導入や責任者を含めた人件費などが必要です。
もし外部コンサルに頼る場合は、さらに多額な費用が発生します。また、審査料や登録料、更新時の審査料などもかかります。
4. ISO9001取得にかかるコスト
ISO9001取得にかかる費用として、審査にかかる「審査料」とISO登録にかかる「ISO登録料」、審査員が来社するための「交通費・宿泊費」が挙げられます。各業界の従業員別における取得コストの平均相場は、以下のとおりです。
業界/従業員数 | 1~20名 | 21~50名 | 51~100名 | 101名~ |
---|---|---|---|---|
製造・加工業 | 36万円 | 46万円 | 66万円 | 96万円 |
建築・建設業 | 35万円 | 52万円 | 74万円 | 100万円 |
取得にかかる金額は規模や業種によって異なりますので、事前に把握して準備しましょう。
5. 要求事項とは
要求事項とは、ISO9001の認定に向けて求められる項目です。要求事項は、以下の10項目です。
- 1. 適用範囲
- 2. 引用規格
- 3. 用語及び定義
- 4. 組織の状況
- 5. リーダーシップ
- 6. 計画
- 7. 支援
- 8. 運用
- 9. パフォーマンス評価
- 10.改善
1〜3は要求事項の前提となる情報であり、具体的な要求事項は4〜10です。ここでは、4〜10で押さえるべきポイントや取り組み内容を具体的に解説します。
組織の状況
「組織の状況」で求められるのは、会社を取り巻く社内外の環境把握や分析です。品質管理体制や管理範囲を決定するためには、以下3つのポイントに沿って組織の現状を明らかにする必要があります。要求事項には、以下のようなものがあります。
- 内部・外部環境における課題
- 利害関係者が求めるもの
- 製品・サービスの提供のために必要な組織体制
特に、理想の体制を構築するうえでは、分析の基礎となる「内部・外部環境における課題」の把握が重要です。

リーダーシップ
「リーダーシップ」で求められるのは、経営者によるトップマネジメントです。リーダーが自ら率先し、組織の目標達成に向けて以下のような取り組みが求められます。要求事項の詳細には、以下のようなものがあります。
- 品質に関する方針の策定と周知
- 品質管理の大切さに関する周知
- 組織の体制づくりや役割・権限の明確化
リーダーシップの項目に、「管理責任者」の文言は記載されていません。経営者は管理責任者へ丸投げしてしまうのではなく、自らの言葉を従業員全員に伝え意欲を向上させる姿勢が求められています。

計画
「計画」で求められるのは、管理体制を構築するための計画策定です。「4.組織の状況」を踏まえ、具体的な取り組み内容を設定するPDCAサイクルの「P」にあたります。要求事項の詳細には、以下のようなものがあります。
- 課題解決や求められるものに対する取り組み
- 品質目標の達成に向けた計画
- 目標の達成状況を評価する体系
計画は抽象的な方針では不十分であり、具体的な取り組みまで求められています。また、損失が発生した場合の対応や、評価体系についても明らかにしましょう。

支援
「支援」で求められるのは、組織を適切に運用するために必要となる資源です。製品やサービスのクオリティを一定以上に保つための資源や、不足した場合の調達方法を決める必要があります。要求事項の詳細には、以下のようなものがあります。
- 人員(人員数・能力・育成体制)
- 設備(製品・サービスを作り出す設備、品質を管理する設備)
- 知識(QMSを運用する知識)
資源の検討にあたっては、社内資源だけではなく社外から取得すべき資源も洗い出したうえで、どのように活用するかを検討しましょう。

運用
「運用」で求められるのは、組織の状況やリーダーシップの検討や計画を踏まえた製造現場での実践です。運用はPDCAサイクルの「D」にあたり、現場への影響度が高い要求事項です。要求事項の詳細には、以下のようなものがあります。
- 運用手法を明確化する
- 製品・サービスの開発で必要な情報を管理する
- 資材購入や外部業者への委託に関する情報を管理する
- 製品・サービスの提供を実現する
- 不適合製品の使用・出荷を未然防止する
ISO9001への適切な準拠だけではなく、現実的に業務が滞りなく進むかも考慮する必要があります。

パフォーマンス評価
「パフォーマンス評価」で求められるのは、運用結果の評価です。PDCAサイクルの「C」にあたり、想定した成果が得られているかを確認する必要があります。要求事項の詳細には、以下のようなものがあります。
- お客さまの満足度評価
- 内部監査の結果の評価
- 経営者による体制評価
よりよい体制にするためには、適切な評価基準が重要です。そのため、それぞれの評価内容は「いつ・何を・どのように」の3つの基準で評価することがポイントです。経営者・管理者・現場が、適切に評価できる体制を構築しましょう。

改善
「改善」で求められるのは、クオリティや管理体制をよりよいものにする行動です。PDCAサイクルの「A」にあたり、「9.パフォーマンス評価」に基づいて以下の見直しを行います。要求事項の詳細には以下のようなものがあります。
- 製品およびサービスの改善
- 望ましくない作業工程の修正
- 品質管理体制の改善
現状の維持だけではなく、よりよい体制へのアップデートが必要です。また、社内監査だけでなく、社外からの意見やクレームなども改善の機会にするとよいでしょう。

6. 内部監査とは
ISO9001における内部監査とは、定められたルールやマニュアルに沿って業務が行われているかを自社内で確認する業務です。
内部監査は、あらかじめ定めた間隔で実施するように定められています。具体的な監査内容は、自社で選定した内部監査員による対象部署のヒアリングやチェックです。ここからは、内部監査の目的と進め方を解説します。
内部監査の目的
内部監査を実施する目的は、以下の4つです。
目的 | 詳細 |
---|---|
持続性確認 | マニュアルやルールが遵守されているかを確認 |
機能性確認 | 各種取り組みが期待する効果を発揮しているかを確認 |
改善点の有無 | マニュアルやルールなどに改善の余地がないかを確認 |
問題点の追求 | 運用体制の問題点を明確化 |
内部監査には、運用状況と効果を確認するだけではなく、改善点や問題点を第三者視点で明確にする目的もあります。
内部監査の進め方
内部監査は、以下の5つのステップで進めます。
- 1. 計画:監査員が被監査部門と調整しながら計画書を作成
- 2. 準備:監査目的に沿って監査での確認事項を洗い出し
- 3. 実施:確認事項に基づいて監査を実施
- 4. 報告:結果報告のうえ、不適合項目に関する是正処置の計画を確認
- 5. フォロー活動:策定した是正処置の実行状況や効果をフォローアップ
原因の特定や是正計画の策定は、被監査部門の役割です。一方で監査部門は、被監査部門が適切に軌道修正できるように支援します。

7. ISO9001取得までの流れ
ISO9001の取得には、以下のようなプロセスがあります。
- STEP1:取得に向けた検討・準備
- STEP2:品質管理体制の構築
- STEP3:品質管理体制の運用・改善
- STEP4:審査
ここからは、取得までの4つのステップを解説します。スムーズに取得するためにも、順番にチェックしておきましょう。
STEP1:取得に向けた検討・準備
ISO9001取得の第一歩は、取得に向けた検討・準備です。検討や準備が不十分なまま品質管理体制の構築や運用に着手してしまうと、大きな軌道修正を強いられる可能性があります。
まずはキックオフにおいて、取得に向けた方向性を決めましょう。キックオフの際に決める項目には、以下のようなものがあります。
- ISO9001の適用範囲
- 取得までのスケジュール
- 管理責任者と取り組む人材の人選
- 予算
- 社外で利用する資源(システム・コンサルなど)
また、社内周知の徹底も大切です。経営者から全社員に対して情報発信すれば、意識づけができます。
方向性が決定したら、現状分析と対応策を検討しましょう。現在の業務内容を洗い出し、要求事項に足りていない点は改善策を考えていきます。

STEP2:品質管理体制の構築
準備が完了したら、ISO9001の要求事項に適合した品質管理体制を構築します。
- 新たな手順・対応などのマニュアル化
- 社員への教育
- 内部監査の設置
品質管理体制の構築にあたっては、管理体制の文書化が重要です。マニュアル化できる具体的な体制だからこそ、標準化された体制であるといえます。
また、大量のマニュアルを策定しても、従業員が運用できなければ意味がありません。自社の現状に見合った内容かどうかを確認しましょう。

STEP3:品質管理体制の運用・改善
体制構築が一定水準までできたら、いよいよ運用です。
十分に検討を重ねた体制であっても、さまざまな問題点が発生します。運用においては、PDCAサイクルにより改善していく過程が大切です。運用・評価・改善・計画の繰り返しにより、管理体制をブラッシュアップしましょう。
なお、PDCAサイクルで実施した内容については文書化し、計画に基づく運用を実施している証跡として残す必要があります。
STEP4:審査
目標とするレベルまで到達したら、ISO9001取得の審査を受けます。認証取得には、以下のように複数回の審査が必要です。
- 1. 一次審査(文書審査):マニュアルや手順書、記録などに基づき要求事項の充足状況を確認
- 2. 二次審査(現地審査):実際の業務やヒアリングに基づき要求事項の充足状況を確認
- 3. 是正処置:審査で不適合事項があった場合、有効な是正処置を行えば認証取得が可能
- 4. 審査会:審査員の承認が出たあとに審査会で正式に承認
- 5. 認証取得:審査機関より認証番号が付与され、ロゴマークが使用可能
現地審査では、実際の業務記録をもとにインタビューが行われます。不適合と判断されても、審査機関の規定に基づいて是正処置を行えば問題ありません。
8. 品質の維持・向上には品質管理システムの導入がおすすめ!
ISO9001は品質管理体制の国際規格であり、認証取得によりさまざまなメリットが得られます。ただし、取得して終わりではなく、継続して品質を維持・向上し続ける体制が重要です。
継続的な品質の維持・向上に対応した管理システムを導入したい会社の皆さまにおすすめなのが、品質管理システムの「QC-One」です。QC-Oneは、承認機能による改ざん防止や、操作ログをシステム上に残すことにより、内部統制強化を図れます。また、検査データの自動取込機能をはじめ検査データを一元管理することにより、成績表作成や統計分析へ検査データを利活用することができるため、効率的かつ効果的に品質の維持・向上が実現できます。
「QC-One」について詳しく知りたい方は、以下も合わせてご確認ください。
9. ISO9001についてよくある質問
ISO9001についてよくある質問に回答していきます。
正確な情報や理解が備わっていないまま取得に向けて会社が動いてしまうと、時間と労力を無駄にしてしまう可能性があります。
取得に関して非常に大切なポイントを解説します。これから取得を検討する方は、しっかり理解しておきましょう。
「QC-One」について詳しく知りたい方は、以下も合わせてご確認ください。
Q. 認証取得は難しい?
A.
ISO9001の認証取得は難しいものではありませんが、「品質管理システム」を導入すれば、業務効率化と品質向上を両方実現し、スムーズな取得や品質管理体制の維持に役立ちます。
これから認証取得を目指す企業様は、品質管理システムの導入をご検討ください。
Q. 認証取得にかかる期間は?
A. 取得にかかる期間は、6ヵ月〜数年程度が一般的です。ただし、以下のように会社規模や範囲によって差があります。
ステップ | 期間 |
---|---|
体制の検討・構築 | 2~8ヵ月 |
体制の運用・改善 | 数ヵ月~数年 |
審査 | 1ヵ月 |
取得後も管理体制を維持するためには、システム化が重要です。品質管理体制を維持・向上したい方は、システム導入を検討しましょう。